うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第9回は、「非定型うつ病の症状 ⑤ 不安・抑うつ発作」の続き、「非定型うつ病の症状 ⑥ 怒り発作」をみていきます。
目次
非定型うつ病の症状 ⑥ 怒り発作
突然カッとして「キレる」状態
非定型うつ病の拒絶過敏性については前々回でみていきましたが、これが爆発的な怒りとなってあらわれる症状が「怒り発作」、アンガーアタックともいいます。
いわゆる「キレる」状態になり、体を震わせて相手を非難したり、大声で叫んだり、手あたり次第に物を壊したりして手がつけられない状態になります。
きっかけは些細なことが多く、普通なら理由にならないことで怒るので、周囲の人はわけが分からず困惑するばかり。
ここで大騒ぎすると、ますます繁樹を与えることになってしまいます。
怒り発作の対処は難しいですが、家族や周囲の人は、興奮して同じ土俵に上がらないことがポイントです。
相手がいくら理不尽なことを言っても、理屈で反論せず、やさしく耳を傾けるようにしましょう(反論すると相手はますます興奮します)。
アドバイスをする場合は、相手の様子をみて、気持ちが落ち着いたところを見計らいながら、客観的な意見を言います。
時間はかかっても必ず良くなると信じて、焦らず冷静な態度を保つことが大切です。
発作あとは、抑うつが強まる
怒り発作がおさまったあとは、「申し訳ないことをした…」と激しい自己嫌悪に陥り、さらにうつ状態が悪化します。
また、発作を起こしたのは本来の自分ではない、「おかしい」と感じています。
怒り発作は全ての患者さんに起こるわけではないですが、この発作がある患者さんは、「うつ尺度が高い」という調査報告もあります。
怒り発作がしばしば起こる患者さんは、医師に相談して感情調整薬や鎮静薬を処方してもらうことも対処法のひとつです。
また、発作のよる社会的損失を最小限にするためには、休職することも選択肢のひとつになります。
「怒り発作」の診断基準
B 過去半年間、ささいなことに対して過剰な怒りを示す
C 過去1か月以内に、不穏当な方法で他人に対して怒ったり、激怒したりすることが1回以上ある。
D 怒り発作において、以下に示す症状を4つ以上、少なくとも1回以上体験している
a 心拍の増加、心臓がドキンドキンと打つ、動悸
b ほてり、赤面
c 胸の締め付け、胸痛、または胸部圧迫感
d 手足の感覚麻痺、またはうずく感じ
e 頭がフラフラする感じ、めまい、不安定な感じ
f 息切れ、または呼吸困難
g 発汗
h ふるえ、または身ぶるい
i 激しい恐怖、パニックのような感じ(いてもたってもいられない)、不安感
k 他人の体を攻撃したい、または怒鳴りたいような気分
l 実際に他人の体を攻撃する、または言葉で攻撃する
m まわりのものを投げたり、壊したりする
アンガーアタックは、怒りの感情をコントロールできないために起こる行動で、性格によるものではありません。
冷静になったあとは自己嫌悪に陥り、うつ状態が悪化することもあるのです。
次回、「非定型うつ病の症状 ⑦ フラッシュバック」へ続く